今年、初めて確定申告をしたクライアントから
「東京都から個人の事業内容に関する回答書というものがきたんですが、これどうしたらいいでしょう?」と質問を受けました。
各自治体によって質問書の名称は様々なんですが、初めて確定申告を行った場合に、後日このようなお尋ねが来ることが多くあります。
これは個人事業税に関する質問書で、確定申告をした事業所得が個人事業税の課税対象となるのかどうかを判定するための参考資料になります。
ちゃんと書かないと、本来個人事業税の課税を受けないはずなのに納付書が送られてきちゃうこともあるので要注意なんです!!
個人事業税とは?
個人事業税とは個人で事業を行っている方に対して都道府県が課税してくる税金をいいます。
ただし、個人事業税の課税対象は地方税法で定められた事業から生じる所得に限定されていることから、上記のような回答書が送られて来るわけです。
すなわち確定申告した事業所得の内容が地方税法で定める事業に合致するのかの判断材料にしたいわけですね。
下記に地方税法で定める事業の一覧を添付しておきますが、一見するとほとんどの事業が課税対象となっています。
しかし、今は色々な働き方や事業がありますので、結構ドンピシャで合致しないケースもあります。
そういった場合には、安易に質問書を記載して返送すると、本来は個人事業税の課税を受けないはずなのに一方的に課税されてしまうことになります。
一回、個人事業税の課税を受けてしまうと、その後毎年課税されることになりますので、最初のこの回答書は特に慎重に記載しなくてはいけません。
個人事業税のまとめ
課税客体 | 地方税法及びこれに基づく政令において法定列挙されている事業(70種)について課されます。 |
納税義務者 | 法定列挙されている事業を行う個人が対象となります。 ※従って、法定列挙されていない事業を行う個人に対しては、個人事業税は課されません。 |
課税団体 | 法定列挙されている事業を行う事務所又は事業所所在の都道府県が課すことになります。 ※従って、自宅の所在地で確定申告をしていたとしても、個人事業税は事業を行う事務所又は事業所の所在地の都道府県に納税することになります。 複数の都道府県に事業所がある場合には各都道府県に納税(従業者の数によって分割)することになります。 |
税率 | 法定列挙されている事業を第1種事業、第2種事業、第3種事業に分類し、それぞれの業種に応じて税率が定められています。 |
課税標準となる事業の所得 | 前年中の事業の所得(所得税の計算に準拠します。以下同じ。) ※年の中途において事業を廃止した場合には、前年中の事業の所得とその年の1月1日から事業の廃止の日までの事業の所得となります。 |
所得税の青色申告特別控除 | 個人事業税の課税標準を計算する際には所得税の青色申告特別控除額は控除せず、その控除前の事業所得を使用します。 |
事業主控除 | 所得税の青色申告特別を控除できない代わりに事業主控除を事業所得から控除することができます。 年間290万円とされており、年の中途で事業を開始した場合には月数按分を行って控除額の計算を行います(千円未満切り上げ)。 ※事業の所得が事業主控除額以下である場合には個人事業税は課されません。 |
個人事業税の非課税所得 | - 医業等を行う個人の社会保険診療報酬に係る所得(医業、歯科医業、薬剤師業、あん摩、マッサージ、柔道整復業他)
- 外国での事業に係る所得(外国に有する事務所等で生じた所得)
- 林業から生ずる所得
- 鉱物掘採事業から生ずる所得
- 地方税法第72条の2に定める事業に該当しないものから生ずる所得(法定列挙に該当しない事業のこと)
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法定列挙されている事業と個人事業税の税率
※不動産貸付業と駐車場業の場合は一定規模の事業実体がある場合について課税を受けます。
例:マンション賃貸(10室以上)、駐車場賃貸(駐車可能台数が10台以上)など。
稀に一定規模以上ではないのに個人事業税が課税されているケースがあります。
この場合は自治体に異議を申し立て課税の取り消しを行う必要があるのですが、大体がこの要件を知らずに納税してしまっているので注意が必要です。
一応確定申告書に部屋数や駐車場の駐車台数を記載する箇所がありますので漏れなく記載したいものです。
※白色不動産所得の決算書には上記の表記がありますが、青色不動産所得にはありませんね。というわけで要注意です!!
個人事業税が課税されない事業とは?
上記の法定列挙されている事業を見ていただくと、だいたいの業種が当てはまってしまうかと思います。
当てはまってしまう場合には残念ですが個人事業税が課税されることになってしまいますね。
しかし、当てはまらない業種にどんなものがあるのかな?と考えたのですが、下記のような事業は該当しないんでしょうね。
また、課税される事業と下記のような課税されない事業を共に行っている場合には、各事業別の所得を集計し確定申告書の非課税所得の欄に課税されない事業の所得金額を記載する必要があります。
- 芸能人
- プロスポーツ選手
- 文筆業(小説家、脚本家など)
- 漫画家
- 画家
- 音楽家
- 鳶職や左官業などの建設業
- 農業
- 保険営業等の外交員
- 通訳や翻訳業
- プログラマー業(HP制作などはデザイン業に含まれる場合もあるので内容次第かと)
- アフィリエイト(ケースバイケースかと)
- Youtuber(ケースバイケースかと)
- 専業トレーダー(株式、FX、仮想通貨など)
まとめ
普段はあまり個人事業税を意識することは少ないのですが、よくよく検討してみると、個人事業の開業届に記載する業種目や各事業ごとに所得を把握し確定申告書の非課税所得欄にきちんと記載するなど、やっておけば節税できる部分は多分にありますね。
マニアックな税目ではありますが手間をかけるかかけないかで大きく納税額は変わってきそうです。
税理士さんに確定申告をお願いされているからっていっても、安心できませんよ笑
よっぽどしっかりした税理士さんでない限りは個人事業税の事業別に所得を集計することなんてあり得ませんせんから。
社会保険診療に関する非課税所得を集計する位でしょうね。なので、複数の事業を行っている場合には要要要要注意事項です!!