東京(渋谷区・恵比寿)の税理士事務所|税理士法人セルボ・クレール 東京事務所
東京都渋谷区恵比寿1-23-21 ヤマトハイツ802号室
  1. 税務相談室
  2. 消費税の計算は怖いなぁという話
 

消費税の計算は怖いなぁという話

2017/07/19
消費税の計算は怖いなぁという話
平成29年6月の前半にサクセスホールディングス株式会社という上場会社(証券コード:6065)が大胆な消費税の計算誤りをしていたとして過去の有価証券報告書と決算短信を訂正したというニュースがありました。
過少に申告していた消費税はなんと総額5億54百万円にも及ぶとのことです。
これは単年の連結営業利益が4億前後の会社にすれば非常にインパクトのある金額です。

通常は修正申告する年度で追加で納税する消費税を損失計上することになるのですが、会計上は誤謬修正(過去の決算を遡って修正する方法)を行ったようなので、それぞれの発生年度に損失計上を散らすことによって、単年度で赤字にはならないようですが、来期の通期見通の営業利益は50百万円と開示されたことで、当然、IRの翌日は大幅に株価は下落してしまったわけです。

このニュースを見たときには「ふーん。」位にしか思っていなかったのですが、本日付のIRで同業の株式会社JPホールディングス(証券コード:2749)までもが同様の消費税の過少申告により総額2億5千万〜3億5千万円の追加納付が発生したとのことだそうです。

両社の株式も持っていないんですけど、
事務所のクライアントに同業の会社があることから、ちょっくら検討しておこうかと思います。
消費税の計算誤りの原因とは?
両社のIRで共通するのは消費税の計算において本来「非課税売上」として処理すべき部分を「不課税売上」として処理していたというもののようです。
ともに両社は保育園や保育所の運営受託を主たる事業にしている会社であることから、当該保育所に関連する売上の課税区分を誤ったというのが実態であるようです。
サクセスホールディングス株式会社のIRより抜粋
平成 22 年 12 月期より税務業務を一括して税理士法人に委託しておりましたが....(中略).......、
認可保育園の運営委託料に係る売上高につき、消費税における課税区分を「非課税」とすべきところが「不課税」 として処理されていた.......。
株式会社JPホールディングスのIRより抜粋

当社が運営する認可保育園のうち公設民営による保育園等の運営委託料に係る消費税の課税区分に一部誤りがあり......。

※上記のサクセスホールディングスの前段の税理士法人に税務業務を委託していたとありますが、保育所関連の売上取引は非常に多岐に渡るので、その個々の取引についてきちんと課税区分の判定をしておかないと、決算で税理士がレビューをするだけでは見落とす可能性は非常に大きいと思います。おそらくはシステム上の課税区分が当初から「不課税」などの誤った税区分になっていたんだと推測します。
IRで突っ込まれた税理士法人さんをとても不憫に思いますが、こういった大企業の入金帳簿などは元帳からレビューすることはほとんどないですし、定型の振替伝票でまとめて入力されているケースが多く、個別具体的な入金のエビデンスまでいちいち確認することは不可能ですから。ただ、関与当初に消費税の課税区分について整理しておくべきでしたね。

保育園や保育所関連の売上で非課税となるものは何?
普段は書籍等で該当するのかしないのかを調べるだけで終わるのですが、保育所関係で「非課税売上」について定めている規定は下記のものしかありません。

消費税法第6条①
国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない

別表第一七ロより
社会福祉事業等によるサービスの提供
社会福祉法に規定する第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業、更生保護事業法に規定する更生保護事業などの社会福祉事業等によるサービスの提供
※国税庁HPより

※第一種社会福祉事業とは?
経営適正を欠いた場合、利用者の人権擁護の観点から問題が大きいため、確実公正な運営確保の必要性が高い事業(主として入所施設サービス)です。
救護施設/更生施設/乳児院/母子生活支援施設/児童養護施設/障害児入所施設/養護老人ホーム/特別養護老人ホーム/軽費老人ホーム/障害者支援施設/婦人保護施設等 17事業を経営する事業

第二種社会福祉事業とは?
事業の実施に伴い、利用者への影響が比較的少なく、自主性と創意工夫を助長するため、公的規制の必要性が低い事業(主として在宅・通所サービス)です。
助産施設/保育所/児童家庭支援センター/母子福祉施設/老人デイサービスセンター/老人短期入所施設/老人福祉センター/老人介護支援センター/身体障害者福祉センター/無料低額診療事業/隣保事業/福祉サービス利用援助事業等 52事業

福祉事業の詳細は消費税税基本通達6−7−5にあります。

保育所については認可保育所と認可外保育所に大別されますが、認可外保育所でも都道府県から認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書の交付を受けた場合には、認可保育所と消費税法上、同様の取り扱いにするという通達が整備されています

国税庁「質疑応答事例(消費税法基本通達6−7−7の2)」

非課税の対象となる認可外保育施設
都道府県知事の認可を受けていない保育施設(以下「認可外保育施設」といいます。)のうち、一定の基準(認可外保育施設指導監督基準)を満たすもので都道府県知事等からその基準を満たす旨の証明書の交付を受けた施設及び幼稚園併設型認可外保育施設の利用料については、児童福祉法の規定に基づく認可を受けて設置された保育所(以下「保育所」といいます。)の保育料と同様に非課税とされます

非課税となる利用料等の範囲
上記の証明書の交付を受けた認可外保育施設及び幼稚園併設型認可外保育施設が行う資産の譲渡等のうち、消費税が非課税となるのは、乳児又は幼児を保育する業務として行う資産の譲渡等に限られます
この場合の乳児又は幼児を保育する業務として行う資産の譲渡等には、保育所において行われる保育サービスと同様のサービスが該当します。

従って、保育所まわりの収入別に消費税の課税区分をまとめると、下記のようになります。
 収入の種別(保育所独特の収入) 認可保育所(証明書あり)認可外保育所(証明書なし) 
補助金、寄付金収入、交付金収入、配当金収入、保険金収入 不課税売上 不課税売上
保育料
延長保育、一時保育、病後児保育にかかるものを含みます。
非課税売上 課税売上
保育所の運営に係る地方公共団体等からの委託料 非課税 ー
保育を受けるために必要な予約料、年会費、入園料(入会金・登録料)、送迎料
非課税売上課税売上
給食費、おやつ代、施設に備え付ける教材を購入するために徴収する教材費、傷害・賠償保険料の負担金、施設費(暖房費、光熱水費)等のように通常保育料として領収される料金等  保育に必要不可欠なものであるものに限り、非課税売上
課税売上
施設利用者に対して販売する制服、売店での教材等の販売代金など  課税売上課税売上
施設利用者の選択により付加的にサービスを受けるためのクリーニング代、オムツサービス代、スイミングスクール等の習い事の講習料など 課税売上課税売上
バザー、夏祭り等の収入など 課税売上課税売上
上記赤ハイライト部分の根拠通達
消費税基本通達6-7-9 (社会福祉事業の委託に係る取扱い)

社会福祉法人等が地方公共団体等から当該地方公共団体等が設置した社会福祉施設の経営を委託された場合に当該社会福祉法人等が行う当該社会福祉施設の経営は、法別表第一第七号ロ《社会福祉事業等に係る資産の譲渡等に規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に該当し、非課税となる。(平12課消2−10により追加)

(注)事業者が社会福祉施設に係る業務の一部を当該社会福祉施設を設置した地方公共団体等又は設置者である地方公共団等から当該社会福祉施設の経営を委託された社会福祉法人等の委託により行う場合(当該業務の一部を行うことが社会福祉事業に該当する場合を除く。)、当該事業者が行う業務は、同号に規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等には該当しないことに留意する。

まとめ
恐らく今回の消費税の計算誤りに関するエラーが生じたのは上記の赤でハイライトした箇所に係るものだと思われます。
入金の相手先が地方自治体であるため、補助金や交付金などの収入とごっちゃにしてしまっていたものと推測しますが、正直なところかなり専門的な論点なのでエラーが出てもしゃーないのかと思います。

消費税の基本通達で規定しているある種独特な取り扱いなので、この論点について税理士法人さんもきちんとフォローしておくべきだとは思いますが、僕が担当者だった場合にきちんと対応できたのかどうか......。社会福祉法人を専門でやっている税理士さんなら当たり前の通達なのかもしれませんが、普段このような業種と接する機会の少ない僕としては社会福祉系の会社の顧問は受けたらあかんなと思った次第であります笑

余談ではありますが、関連銘柄には幼児活動研究会(2152)、グローバルグループ(6189)などがあります笑


税理士法人セルボ・クレール  

お問い合わせ                 

TOKYO OFFICE. 

〒150-0013

東京都渋谷区恵比寿1-23-21 ヤマトハイツ802号室

TEL:03-6721-9737(営業時間:9:30〜18:30)

FAX:03-6721-9738

Mail:info(a)cerveau-creer.com

代表社員 税理士 長村 安展                          

公認会計士・税理士 渡邉 一生


OSAKA OFFICE.

〒530-0047

大阪市北区西天満1-1-11 レーベルビル4F

TEL:06-6809-1664(営業時間:9:30〜18:30)

FAX:06-6809-7664

Mail:info(a)cerveau-creer.com

代表社員 税理士 木下 陽介

公認会計士・税理士 辻秀明