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新たな「認定医療法人制度」で医療法人の出資持分問題は一挙解決となるのか

2017/07/19
新たな「認定医療法人制度」で医療法人の出資持分問題は一挙解決となるのか

平成29年10月1日から新たな「認定医療法人制度」がスタートすることで、積年の課題であった(持分あり)医療法人の出資持分問題に終止符が打たれるぞと巷で騒がれております。




医療法人の出資持分問題

出資持分とは、「定款の定めるところにより、出資額に応じた払戻しまたは残余財産の分配を受ける権利」と医療法で定義されています。

そして、この権利は「時価」により算定することが可能であると判例により示されています。

また、財産的価値があるため権利を持ったまま出資者がなくなると「相続税評価額」相当が相続税の課税対象となるのです。

要は、①払戻し請求に基づき時価で持分を払い戻す必要があることおよび②相続の発生により相続税評価額により相続税課税されること、この2点が医療法人の根幹を揺るがす医業経営上のリスクとなっているのです。これを世間では「医療法人の出資持分問題」と呼んでいます。



そもそも、出資持分の払戻し等については、配当を禁止する医療法に抵触するというかねてからの指摘もあり、平成19年4月以降に設立される医療法人はすべて「持分なし」医療法人とされています。

 

ですので、こういったことが問題となるのは、経過措置として残された「持分あり」医療法人のみということになります。

 

では、この問題を回避するために、「持分をなくせばいいじゃん」となるのですが、それが一筋縄にはいかない。

 

現状、「持分あり」の医療法人が「持分なし」の医療法人に移行するためには、認可のハードルがかなり高い「社会医療法人」「特定医療法人」への移行か、それとも「(一般の)持分なし医療法人」に移行するかの3パターンしかありません。

 

通常は、「(一般の)持分なし医療法人」への移行を検討することとなるのでしょうが、これがまた「残存出資者への贈与税」「医療法人への贈与税」といったみなし贈与税の問題(最下部イメージ図参照)が立ちはだかります。

 

ここではその詳細は省略しますが、これらの問題をクリアすべく平成26年の10月からスタートした現行の「認定医療法人制度」も片手落ちの制度で、平成26年10月の制度開始以降の認定件数は61件、うち完了件数は13件(平成28年9月末現在)といった使われなさです・・

 

現状のルールでは、下記の相令33③の非課税規定をクリアしない限り、最終的に医療法人に対して贈与税が課せられることを回避する術がなく、これが大きな障壁となっていたのですが、ここに風穴があくことを期待されているのが平成29年10月1日からスタートする新たな「認定医療法人制度」なんです。



相令33③の非課税規定

次の要件をすべて満たさない場合に、法人に贈与税が課される可能性がある。
  1. 運営組織が適正
  2. 役員の親族1/3以下
  3. 特別の利益供与禁止
  4. 残余財産は国等に帰属法令違反等の事実なし


平成29年度税制改正と医療法の改正によりスタートする新たなルールの下では、一定の要件を満たせば医療法人に対する贈与税課税がなくなります。



平成29年度税制改正


(新たな認定医療法人制度の)認定を受けた医療法人の持分を有する個人がその持分の全部又は一部の放棄をしたことにより、当該医療法人がその認定移行計画に記載された移行期限までに持分の定めのない医療法人への移行をした場合には、当該医療法人が当該放棄により受けた経済的利益については、贈与税を課さない



その一定の要件というのが、この8月のパブリックコメント(形だけの意見募集)を経て9月頃に正式に公表されると言われているのですが、おそらくこれまでの非課税規定のなかでも最大の障壁となっていた「役員の親族要件1/3以下」要件が外されるだろうと言われていますので、多くの(持分あり)医療法人にとって(持分なし)医療法人への移行がかなり現実的な選択肢となるのではないでしょうか。

 

ここで税理士の立場に立ってこの一連の改正等を考えると、医療法人というのは通常の法人顧問にプラスして理事長個人の相続税申告や事業承継コンサルティング業務がくっついてくるかなりおいしい案件であったのですが、これにより相続税の問題や事業の承継の問題が一気に解決される可能性が出てくるわけですね(涙)

 

そうなると、悪徳、いや一般の税理士はこの「持分なし」医療法人への移行コンサルティング業務が最後の稼ぎ時とばかりにやみくもに提案・実行を推し進めてくるんじゃないかと個人的には危惧しています。

 

もちろん出資持分問題が解決するのは良いことですが、大前提として医療法人の出資持分も財産なんですよ!

 

この側面を無視して考えたら大変な損害を被ることになりかねません。

 

ご自身の医療法人の出口戦略をちょっとイメージしてみてください。

「親族内承継」ですか?

「親族外承継(M&A)」ですか?

「廃業(残余財産の分配)」ですか?

 

もちろん個別の状況によっていろいろ考えなければならないことはありますが、基本的にはM&Aや廃業を選択するのであれば、出資持分を高値で買い取ってほしくないですか?残余財産の分配をしっかり受けたくありませんか?

 

よくよく考えて本当に信頼できる税理士に相談しましょう!

 

最新情報が公表されれば、また追加情報アップします。

現に僕の身近なクライアントも制度がスタート次第認定の申請をしようかなという医療法人が2法人ありますので、その実際の手続きなんかもリアルな最新情報をお届けできるかなと思ってます。




「みなし贈与税のイメージ」



 


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