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  1. 土地を売却した場合の課税売上割合に準ずる割合の検討
 

土地を売却した場合の課税売上割合に準ずる割合の検討

2017/09/04 土地を売却した場合の課税売上割合に準ずる割合の検討
税理士の長村です。

最近不動産関連のエントリーが続いていますね。
今朝までこんなことを書くつもりは全くなかったんですが、事務所のスタッフから課税売上割合に準ずる割合の適用の是非について相談されたんですけど、細かい論点を忘れていたんで、よくよく調べて見たところ、こりゃ大事だということで、自戒の意味も込めてまとめておこうと思います。

基本的なテーマとしては「たまたま土地を譲渡した場合の(消費税の)課税売上割合に準ずる割合」の適用についてです。



土地を売却すると消費税の納税額が増えてしまいます
消費税の「課税売上となる事業」を主たる事業としている会社の場合には、消費税の課税売上割合が95%以上になることから、消費税の課税仕入の計算は「全額控除」になっているかと思います(通常は非課税売上となるのは預金利子の収入しかないことがほとんどなので。)。

しかし、工場の建て替えや本社移転のため土地・建物を売却したりすると、たまたま土地の売却収入が突発的に発生してしまい、その売却年度の課税売上割合が期せずして著しく低下してしまうことがあります。土地の売却収入は消費税法上「非課税売上」とされているため、土地の売却収入が数千万円〜数億円も計上されてしまうと、本業の課税売上がとても大きな大企業の場合にはあまり問題になることは少ないのですが、中小企業の場合にはその年度だけ課税売上割合が激減してしまうことになります。

今や、土地・建物を所有しているクライアントは少なくなってきましたが、社歴の長い会社ほど、不動産を所有しているケースが多いので注意が必要です。

課税売上割合が95%を下回ってしまうと、消費税の課税仕入の計算方法は「個別対応方式」ないしは、「一括比例配分方式」により計算することになり、それぞれ課税売上割合を用いて計算を行うことになるため、課税売上割合が著しく下がってしまうと、その年度の消費税の納税額が期せずして増加してしまうことになります。


課税売上割合に準ずる割合について
そこで今回のテーマである「課税売上割合に準ずる割合」の検討が必要になってくるわけです。
そもそも「課税売上割合に準ずる割合」の規定は本来複数の事業(課税売上の事業と非課税売上の事業)を行なっている大企業向けに規定が整備されているのですが、国税庁の質疑応答事例では、上記のようにたまたま土地を売却したことにより課税売上割合が激減してしまうことが予想される場合に限っては「課税売上割合に準ずる割合」の規定を適用してもいいよと、その具体的な取り扱いが掲載されています。


消費税法第30条B

前項第一号に掲げる場合【個別対応方式を適用する場合】において、同号ロに掲げる金額の計算の基礎となる同号ロに規定する課税売上割合に準ずる割合当該割合が当該事業者の営む事業の種類の異なるごと又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとに区分して算出したものである場合には、当該区分して算出したそれぞれの割合。以下この項において同じ。)で次に掲げる要件の全てに該当するものがあるときは、当該事業者の第二号に規定する承認を受けた日の属する課税期間以後の課税期間については、前項第一号の規定にかかわらず、同号ロに掲げる金額は、当該課税売上割合に代えて、当該割合を用いて計算した金額とする。ただし、当該割合を用いて計算することをやめようとする旨を記載した届出書を提出した日の属する課税期間以後の課税期間については、この限りでない。

一  当該割合が当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであること。

二  当該割合を用いて前項第一号ロに掲げる金額を計算することにつき、その納税地を所轄する税務署長の承認を受けたものであること。

(課税売上割合に準ずる割合に係る税務署長の承認等)

消費税法施行例第四十七条  

法第三十条第三項第二号 に規定する承認を受けようとする事業者は、その用いようとする同項 に規定する課税売上割合に準ずる割合(以下この条において「課税売上割合に準ずる割合」という。)の算出方法の内容その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。

2  税務署長は、前項の申請書の提出があつた場合には、遅滞なく、これを審査し、その申請に係る課税売上割合に準ずる割合を用いて法第三十条第二項第一号 ロに掲げる金額(次項及び第五項において「共通仕入控除税額」という。)を計算することを承認し、又はその申請に係る課税売上割合に準ずる割合が合理的に算出されたものでないと認めるときは、その申請を却下する。

3  税務署長は、前項の承認をした後、その承認に係る課税売上割合に準ずる割合を用いて共通仕入控除税額を計算することを不適当とする特別の事情が生じたと認める場合には、その承認を取り消すことができる。

4  税務署長は、前二項の処分をするときは、その処分に係る事業者に対し、書面によりその旨を通知する。

5  第三項の処分があつた場合には、その処分のあつた日の属する課税期間以後の各課税期間における共通仕入控除税額の計算についてその処分の効果が生ずるものとする。

課税売上割合に準ずる割合に関する法令は上記の2つしかありません。
しかし、あまり消費税を勉強していない人が勘違いしている論点がいくつかあるので、下記にまとめておきます。

課税売上割合に準ずる割合のまとめ
勘違いしやすい論点 コメント
課税仕入に係る消費税の計算方法の判定
(全額控除or個別対応方式/一括比例配分方式)
課税売上割合が引き続き用いられます

(課税売上割合が95%未満であるかどうかの判定)

消費税基本通達11−5−9 法第30条第2項本文《仕入控除税額の計算》に規定する「課税売上割合が100分の95に満たないとき」に該当するかどうかは、事業者が課税売上割合に準ずる割合につき税務署長の承認を受けているかどうかにかかわらず、課税売上割合によって判定することに留意する。
一括比例配分方式の計算でも使用できる? 課税売上割合に準ずる割合は個別対応方式の共通仕入控除税額の計算にしか使用することはできません。一括比例配分方式では通常通り課税売上割合が適用されます。そのため、一括比例配分方式の強制適用期間中は個別対応方式を使用することができないため注意が必要です。
いつから適用できる? 課税売上割合に準ずる割合については税務署に承認申請書を提出し、署内での審査を受ける必要があるため、単に承認申請書を適用を受けたい課税期間中に提出しておけば良いというものではありません。審査には最低一月は必要となるため、余裕を持って申請を行い、税務署の担当者とも連携をとっておく方がベターです
合理的な計算方法とは? 消費税法基本通達では課税売上割合に準ずる割合の合理的な計算方法の例示や使用例が規定されています。

(課税売上割合に準ずる割合)

消費税基本通達11−5−7 法第30条第3項《課税売上割合に準ずる割合》に規定する課税売上割合に準ずる割合(以下11−5−9までにおいて「課税売上割合に準ずる割合」という。)とは、使用人の数又は従事日数の割合消費又は使用する資産の価額使用数量使用面積の割合その他課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものの性質に応ずる合理的な基準により算出した割合をいう。

(課税売上割合に準ずる割合の適用範囲)

消費税基本通達11−5−8 課税売上割合に準ずる割合の適用に当たっては、その事業者が行う事業の全部について同一の割合を適用する必要はなく、例えば、次の方法によることもできるのであるから留意する。

 ただし、この場合には、適用すべき課税売上割合に準ずる割合の全てについて税務署長の承認を受けなければならないのであるから留意する。(平23課消1-35により改正)

(1) 当該事業者の営む事業の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法

(2) 当該事業者の事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法

(3) 当該事業者の事業に係る事業場の単位ごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法

上記のように、課税売上割合に準ずる割合の規定は突発的に課税売上割合が著しく減少してしまうことを救済しようという意図から設けられているものではありません。
一つの会社で課税売上の生じる事業と非課税売上の生じる事業を行なっている場合に、単純に会社全体での課税売上割合を用いて消費税の計算を行なってしまうと合理的な計算を行うことができないという場合に限って、その適用が認められているものです。そもそも適用対象は金融機関や証券会社などだったのではないかと考えられますし、そういった規模の大きな会社の場合だと課税売上割合の数%が、数億円の差異になってくるわけですから、当然といえば当然だと思います。
しかし、僕がトーマツ勤務時代にいくつか金融機関のクライアントを担当していましたが、課税売上割合に準ずる割合を適用しているケースはありませんでした笑


質疑応答事例に基づく課税売上割合に準ずる割合
法令を読む限り、たまたま土地を売却したからといって、課税売上割合に準ずる割合を適用することは本来できないと考えられますが、国税庁の質疑応答事例ではいくつかの条件を満たす場合に限り、一時的に課税売上割合に準ずる割合を適用することを認めています。しかし、これはあくまで特例的な適用である点はきちんと押さえておくべきです。
また、土地の売却に関わらず、株式の譲渡(子会社の売却等)等が生じた場合など、この取り扱いを応用できる機会は意外とあるのかもしれません。

国税庁 質疑応答事例

土地の譲渡が単発のものであり、かつ、当該土地の譲渡がなかったとした場合には、事業の実態に変動がないと認められる場合に限り、次の1又は2の割合のいずれか低い割合により課税売上割合に準ずる割合の承認を与えることとして差し支えないこととします。

 

1 当該土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合(消費税法施行令第53条第3項《通算課税売上割合の計算方法》に規定する計算方法により計算した割合をいう。)

 

2 当該土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合

 

(注)

 

1 土地の譲渡がなかったとした場合に、事業の実態に変動がないと認められる場合とは、事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内である場合とします。

 

2 課税売上割合に準ずる割合は、承認を受けた日の属する課税期間から適用となります。承認審査には一定の期間が必要となりますので、「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」は、余裕をもって提出してください。


3 この課税売上割合に準ずる割合の承認は、たまたま土地の譲渡があった場合に行うものですから、当該課税期間において適用したときは、翌課税期間において「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出してください。なお、提出がない場合には、承認を受けた日の属する課税期間の翌課税期間以降の承認を取り消すものとします。

質疑応答事例のまとめ
適用要件
右記の三つの要件を満たす必要があります。 

 
 
土地の譲渡が単発のものであること
質疑応答事例の趣旨から鑑みると、土地の譲渡が日常的に生じるような事業ではなく、質疑応答事例のタイトルにある通り「たまたま」土地を譲渡したような場合を想定していると考えられます。複数の土地の譲渡をした場合には適用できないのではないかとも考えられますが、同一用途で一体として使用されていた土地であれば問題はないように思います。また、例えば過去3年内に他の土地の譲渡があった場合については、税務署に個別に照会して判断をあおぐべきと思います。というのもあくまでこれは質疑応答事例でしかなく法令ではないため、事業の実態に応じた弾力的な運用がなされるはずだと考えられます。
事業者の営業の実態に変動がないこと
土地の売却が事業の清算活動の一環とみられる場合やリストラのために土地を売却する場合には注意が必要です。その売却した土地で行なっていた事業をやめてしまう場合や代替方法がないと認められる場合には、この要件を充足しない場合が考えられます。
 過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内であること
この過去3年間とは質疑応答事例の趣旨から鑑みて、土地を売却した課税期間を含めた過去3年間の期間を意味すると考えられますので、下記の点に注意が必要です。
・直近の課税期間については、土地の売却収入を考慮せずに課税売上割合を計算する必要があります。
・適用を受けたい課税期間の中途で課税売上割合を計算せざるを得ないため、直近の課税期間については土地売却後の最も新しい試算表に基づいて計算した課税売上割合を用いることになります。あくまで、土地の売却前後で事業の実態がないことが説明できれば問題ないと考えられますので、どの程度の期間を対象に課税売上割合を計算するのかは事前に税務署の担当官と打ち合わせておくべきと考えられます。
計算方法 
右記の課税売上割合の低い割合
 土地の譲渡があった課税期間の3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合
 土地の譲渡があった課税期間の課税期間の課税売上割合 
その他繰り返しになりますが、質疑応答事例に基づく課税売上割合に準ずる割合の適用はあくまで特例的なものです。従って、事前に税務署の担当官とすり合わせを行うべきです。また、承認申請書の様式も上記の適用要件や課税売上割合の比較計算を行うようになっていないため、参考資料等を添付しておく必要があります。また、そもそも論ですが、課税売上割合に準ずる割合が影響するのは課税仕入の用途区分が課税資産の譲渡等にのみ要するものとその他の資産の譲渡等にのみ要するものに共通して要するもの(共通対応)に区分されるものに係る消費税についてだけですので、共通対応に区分される課税仕入の金額があまり大きくない場合にはほとんど効果がないといったケースも考えられます。

上記の質疑応答事例がその適用の対象としているのは、あくまで”たまたま土地の売却が発生する個人事業者又は法人”であると考えられます。
従って、不動産の売買を主たる事業としている場合や少なくとも直近3年以内に他の土地の売却等があった場合など、そもそも適用することができないケースも考えられます。
しかし、この辺りの詳細な取り扱いについては質疑応答事例では記載されておらず最終的な判断は税務署マターになるため、管轄税務署の担当官に個々の事情を説明して、実態に即した対応をお願いする以外に方法はないと考えられます。

※あくまで特例的な寛大な対応をお願いするという姿勢が大事だと思います。
また、「課税売上割合による消費税の計算は当社の事業の実態を反映していない!!」っていうのが殺し文句ではないかと個人的には考えます。

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